生活防衛資金はいくら必要?生活費の月数で試算
投資を始めたい、あるいはNISAの積立額を増やしたいと考えたときに、先に決めておきたいのが「生活防衛資金」です。病気やケガで働けなくなったり、仕事を辞めたりして収入が止まったときに、生活を続けるための手元資金のことを指します。
日本FP協会は、緊急時のための備え(緊急資金)の目安を生活費の3か月分〜1年分(1か月の生活費が20万円なら60万円〜240万円)としています。ただ、3か月と1年では4倍の差があります。この記事では、収入が止まったときにどんな公的保障があり、それが入るまでにどれくらいかかるかをもとに、自分の家計に合う金額を考える手順を整理します。
出典:日本FP協会「主なライフイベントにかかる費用の目安」(2026年10月確認)
ステップ1:基準にするのは「手取り」ではなく「支出」
生活防衛資金は、収入がないあいだの支出をまかなうお金です。そのため、計算の基準は手取り収入ではなく、毎月実際に出ていくお金です。さらに、収入が止まったときに削れる支出(外食、趣味、旅行など)を除いた「絞った生活費」を出しておくと、必要額を現実的に見積もれます。
家賃や通信費、保険料などの固定費は、収入が止まっても減りません。固定費をあらかじめ下げておくと、必要な生活防衛資金そのものが小さくなります。見直しの進め方は固定費の見直し順にまとめています。
ステップ2:収入が止まったときの公的保障を確認する
会社員(健康保険・雇用保険の加入者)と、自営業・フリーランス(国民健康保険の加入者)では、使える公的保障が大きく違います。
| ケース | 主な公的保障 | 給付の目安 | 手元資金でつなぐ必要があること |
|---|---|---|---|
| 会社員が病気・ケガで休業 | 健康保険の傷病手当金 | 1日あたり、標準報酬月額の平均の30分の1の3分の2。支給開始から通算1年6か月まで | 連続3日間の待期があり、支給は4日目から。給与より少なくなる |
| 会社員が自己都合で退職 | 雇用保険の基本手当 | 賃金日額のおよそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%)。年齢ごとに上限あり | 手続き後7日間の待期と、原則1か月の給付制限のあいだは支給されない |
| 医療費が高額になった | 高額療養費制度 | 1か月の自己負担に所得に応じた上限がある | 上限までの自己負担や、保険がきかない費用は自分で払う |
| 自営業・フリーランスが病気・ケガで休業 | 国民健康保険の傷病手当金は、市町村などが条例で定めた場合のみの任意給付 | 自治体によって異なる | 休業中の収入減を自分で備える必要が大きい |
自己都合退職の給付制限は、退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月です(5年間に2回以上の自己都合退職などの場合は3か月)。会社都合の退職や、雇用保険の加入期間などの条件によって扱いが変わるため、実際にはハローワークで確認してください。高額療養費のしくみは高額療養費の上限で詳しく解説しています。基本手当が何日分になるかは失業保険の給付日数で整理しています。
出典:協会けんぽ「傷病手当金」、ハローワークインターネットサービス「基本手当について」、厚生労働省「Q&A〜労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)〜」、厚生労働省「国民健康保険制度の概要」(2026年10月確認)
ステップ3:試算例で必要額の目安を出す
ここからは、仮の数字を使った計算例です。毎月の支出が25万円、そのうち削れない「絞った生活費」が20万円の世帯を想定します。
試算例1:「何か月分」で考えた場合
| 備える期間 | 計算 | 必要額の目安 |
|---|---|---|
| 3か月分 | 20万円 × 3か月 | 60万円 |
| 6か月分 | 20万円 × 6か月 | 120万円 |
| 1年分 | 20万円 × 12か月 | 240万円 |
試算例2:会社員が病気で休業した場合の不足額
標準報酬月額が12か月間ずっと30万円だった人が、病気で2か月(60日)休業し、その間の給与がなかったとします。協会けんぽの計算方法にあてはめると、次のようになります。
- 30万円 ÷ 30 = 10,000円
- 1日あたりの支給額:10,000円 × 2/3 ≒ 6,667円
- 支給される日数:60日 − 待期3日 = 57日
- 傷病手当金の合計:6,667円 × 57日 = 約38万円
- 2か月分の絞った生活費40万円との差:約2万円の不足
傷病手当金があっても、申請から振込までのあいだは手元資金で立て替えることになります。また、この試算には医療費の自己負担は含めていません。給付があるから少なくてよい、と考えるより、「給付が入るまでの期間」と「給付では足りない差額」を手元資金で埋める、と考えると必要額を決めやすくなります。
自営業・フリーランスの場合は、こうした休業中の給付がない場合が多いため、試算例1の「1年分」に近い水準で考える人が多くなります。
ステップ4:置き場所を決める(比較表)
生活防衛資金は「すぐに引き出せること」と「元本が減らないこと」が大切です。値動きのある投資信託や株式とは分けておきましょう。
| 置き場所 | 引き出しやすさ | 元本 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | いつでも引き出せる | 預金保険の対象(1金融機関1人あたり元本1,000万円までと利息等。利息のつかない決済用預金は全額) | 金利は低め。生活費の口座と分けないと使ってしまいやすい |
| 定期預金 | 中途解約はできるが、利率が下がることが多い | 普通預金と同じく預金保険の対象 | 全額を長期の定期にすると、急な出費に対応しにくい |
| 個人向け国債 | 発行後1年たてば中途換金できる | 額面で償還(中途換金時も同じ) | 1年間は原則換金できない。中途換金時は直前2回分の利子(税引前)×0.79685が差し引かれる |
当面の数か月分は普通預金に置き、残りを定期預金や個人向け国債に分ける、という組み合わせもあります。どれが合うかは家計の状況によるため、ここでは特定の商品はおすすめしません。
出典:預金保険機構「保護の範囲」、財務省「個人向け国債 商品概要」(2026年10月確認)
生活防衛資金を準備するチェックリスト
- 直近3か月の支出から、毎月の平均支出と「絞った生活費」を出したか
- 自分の健康保険が健康保険(協会けんぽ・健保組合など)か、国民健康保険かを確認したか
- 勤務先の休職制度や、有給休暇の残り日数を把握しているか
- 共働きの場合、片方の収入が止まったときに足りない金額を出したか
- 備える月数を決め、必要額を計算したか
- 生活費の口座とは別に、生活防衛資金の置き場所を決めたか
- 家電の買い替えや車検など、予定している大きな出費を生活防衛資金と分けたか
- 家族構成や働き方が変わったときに、金額を見直す時期を決めたか
投資を始める前に
生活防衛資金を先に確保しておくと、相場が下がったときに生活費のために投資を取り崩す、という事態を避けやすくなります。NISAのしくみは新NISAの始め方で整理しています。いくらを投資に回すかは、それぞれの家計の状況やリスクの考え方によって変わります。
まとめ
- 生活防衛資金の目安は、日本FP協会では生活費の3か月分〜1年分
- 基準は手取りではなく「絞った生活費」
- 会社員には傷病手当金や基本手当があるが、待期や給付制限のあいだは手元資金でつなぐ
- 自営業・フリーランスは休業中の公的保障が少ないため、多めに考える
- 置き場所は、すぐ引き出せて元本が減らないものを選び、投資のお金とは分ける
よくある質問
生活防衛資金は手取りの何か月分ですか
基準は手取りではなく、毎月の支出です。日本FP協会の目安は生活費の3か月分から1年分です。
会社員と自営業で備えは同じですか
同じではありません。会社員には傷病手当金や基本手当がありますが、待期や給付制限のあいだは手元資金でつなぎます。自営業・フリーランスは休業中の公的保障が少ない、と整理しています。
置き場所は投資でよいですか
すぐに引き出せることと、元本が減らないことが大切、としています。値動きのある投資信託や株式とは分けます。